休日のんびりご近所散歩

連載第2回「自由学園明日館」の巻
〜その2

 私は建築の専門家ではないので、住まいを選ぶ際の条件はただひとつ。外観や内装は特にこだわらず、ただ心地よいかどうかーー。
 その点この「自由学園明日館」は隅々まで美しいばかりか、実に心地よい建物です。
 日本には古来“ハレとケ”という概念がありました。ここ「自由学園明日館」は、教師や子供達が日常を過ごす“ケ”の場所。同時期に建てられた「帝国ホテル」は非日常を過ごす“ハレ”の場所。
 フランク・ロイド・ライトと遠藤新には、“ケ”の日本建築に対する敬意があったと思います。ライトの師、ルイス・サリヴァンが残した「形態は機能に従う」という哲学は、日本の民家にこそふさわしい言葉だとーー。
 神社仏閣といったハレの建築物に見られる過剰な装飾美と、民家のようなケの建築物に見られる慎ましく簡素な機能美。その二つが融合し、共存することで日本の美しい街並みは保たれてきました。
 京都を訪れて、その美しさに誰もが感嘆するのは、それが壊されずに残されてきたから。そして今、「自由学園明日館」の背景にそびえる高層ビルやラブホテルの看板を見て、ため息をつく人も多いと思います。
 かつては池袋も広々とした何もない平地であり、そこに悠々とこの建物が“羽を広げて”いたことは想像に難くありません。
 世界中から賞賛された美しい街並みも、“ハレとケ”の概念すら失った今、この簡素な西洋建築が人々の心を捉えて離さないのは、ライトの日本文化に対する「思い」が感じられるからであり、言い換えれば、日本人が日本人らしかった時代への私達自身の「郷愁」なのかもしれません。(不定期に連載)
←写真は自由学園明日館食堂
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